新嘗祭と皇室献上米
こんにちは。尾形米穀店の尾形雄司です。今回は、新米と関係が深い日本の伝統祭祀「新嘗祭(にいなめさい)」と皇室献上米について紹介します。
新嘗祭は五穀豊穣の収穫祭で、天皇陛下が初穂を神々にお供えし、五穀豊穣に感謝を捧げ、祈念する宮中祭祀です。毎年11月23日に皇居内の神嘉殿と、全国の神社で開催されます。
神嘉殿で行われる新嘗祭には、一般人は参加できませんが、伊勢神宮や明治神宮で行われる新嘗祭には一般人も参加できます。私はまだ新嘗祭に参加したことがないのですが、一度は参加してみたいなと思っています。
新嘗祭では、新穀を神様に感謝の気持ちを込めて奉納し、来年の豊穣を願います。一般的な言葉で言えば、収穫祭と言える祭祀です。
この記事では、新嘗祭の魅力や由来、そして、新嘗祭と深い関わりのある皇室献上米についても紹介します。伝統的な日本の祭りに興味がある方にはぜひ、読んで頂けたらと思います!
新嘗祭の由来と皇室献上米
新嘗祭は、日本の伝統的な祭りの一つで、毎年11月23日に行われます。新嘗祭は、西暦642年に初めて執り行われた伝統ある儀式で、毎年秋の農産物の収穫を祝い、神々への感謝と五穀豊穣の願いを表すために行われてきました。
新嘗祭では、その年に収穫された、日本全国の農産物や海産物が献上されており、鎮魂祭の開催や献上品のお供え、天神地祇へのご奉告、神々との共食などの儀式が行われます。
新嘗祭には天皇陛下も毎年参加され、献上された産物を召し上がられます。天皇陛下に献上されたお米が「皇室献上米」と呼ばれ、この皇室献上米を育てた生産者が「皇室献上農家」と呼ばれます。
山形県小国町の皇室献上農家・石垣さん
尾形米穀店でお取引のある生産者さんの中にも、皇室献上農家さんがいます。2012年の新嘗祭でつや姫を献上された、小国町の石垣恵子さんです。
旦那さんの石垣正憲さんは小国町を代表する生産者の一人で、皇室献上農家に選ばれる前にも、複数のコンクールで金賞・優秀賞を受賞したり、生産した雑穀を国際宇宙ステーション「きぼう」に乗せて、宇宙での発芽実験に協力したりと、精力的な活動をされている生産者さんでした。
お米の栽培方法にもこだわりがあり、育苗から出穂の時期まで、木酢液を散布して育てられています。
木酢液を散布すると、抗菌・(害虫の)忌避効果・土壌の改良等に効果があり、根や葉っぱも強く、農薬や化学肥料の使用を控えても、稲が元気に育っていくそうです。
残念ながら、石垣正憲さんは病気のために2019年に亡くなってしまいましたが、石垣さんの栽培方法は、奥様の石垣恵子さんとおぐに木酢米研究会に引き継がれ、毎年、美味しいお米を育ててくれています。
皇室献上農家に選ばれる難しさ
新嘗祭に献上する農家さんは、各都道府県ごとに毎年選出されるのですが、一年に2人しか選ばれないそうです。
しかも、その2人は、山形県内の各市町村毎に毎年持ち回りで選定(2012年は小国町、13年は●●市、14年は▲▲村…といった感じ)されるそうです。
山形県には35市町村あるので、35年に一度しか選ばれる皇室献上農家に選ばれるチャンスがなく、非常にハードルが高いといえます。
また、実際に天皇陛下が召し上がる物を栽培するわけなので、生産者としての過去の実績や、それまで培ってきた地域への貢献がなければ、皇室献上農家に選出されることはありません。
生前、石垣さんに直接伺った話では、皇室献上農家に選ばれてからも大変で、どの田んぼで皇室献上のお米を栽培しているかは関係者以外は極秘事項で、警察の方がパトロールをしにくることもあったとか。
さらに、栽培期間中は本人はもちろん、同居する家族全員が病気にかかることは許されず、通院もできないので、健康な生活を送るように心がけていたそうです。
また栽培方法も厳格だったそうで、機械をいれることもなく、田植えから収穫・選別まで全てが手作業。それだけの苦労をかけて育てても、納めるお米は1升(1.5kg)だけだったそうで、「桐箱に入れて皇居まで持参して、天皇陛下に直接お渡ししたんですよ」と教えてくれました。
たくさんの苦労もあったと思いますが、一度、皇室献上農家に選ばれれば、農家を続ける限り、皇室献上農家と名乗ることができますので、農家として最上級に名誉なことといえます。
昔は新嘗祭まで新米を食べなかった
昔は、新嘗祭(にいなめさい)が終わるまでは新米を食べない習慣があったそうです。これは、神様に新穀(初穂)を捧げる前に人が食べるのはおそれ多いという考えからきています。
私の母も「私が子供の頃は、年が明けるまで新米を食べなかったよ」と言っていました。
新嘗祭の後に、皇室献上農家のお米を食べてみませんか?
丁度、この記事を投稿している11月23日には、日本全国の神社で新嘗祭が執り行われているはずです。
何かと忙しく、物に溢れた現代では、食卓に並ぶ食べ物に感謝する機会が少ないように思います。古来から続く大事なお祭りの時期だからこそ、昔の伝統に則って、食べ物に感謝する意識を持つのも大事なことではないかなと思いました。
この記事で紹介した小国町の石垣さんとおぐに木酢研究会の生産者さんたちは、酷暑で厳しい環境の中で、決して満足できる仕上がりではなかったようですが、今年も美味しいお米を育ててくれました。
酷暑の中でも育ってくれたお米に「ありがとう」の気持ちを持って召し上がって頂けたら嬉しいです。
もし良かったら、ぜひ一度お試し下さい。最後までお読み頂いてありがとうございました。