こんにちは。
尾形さんの友人のMです。今回も尾形さんに依頼された食べ比べのレポートです。
私は東京で和食の料理人をしており、実家は宮城県で3代続く米農家です。
ということで、友人の頼みとはいえ、プロとしてシビアな目で見ていきたいと思います。
前回は「ひとめぼれ」と「どまんなか」の食べ比べをしましたが、今回は山形県の有名品種、「はえぬき」と「つや姫」の食べ比べです。
山形を代表する2大ブランドと言っても過言ではない、「はえぬき」と「つや姫」。
いったいどれだけ違いを感じることができるでしょうか?
今からとても楽しみです。
「はえぬき」ってこんな米
ササニシキの後継品種として山形農業試験場庄内支場(現・山形県農業総合研究センター水田農業試験場)で、あきたこまちと庄内29号掛け合わせ開発された「はえぬき」は、1991年にデビューしました。
食味ランキングで14年連続特 A を獲得するなど、その食味の良さは折り紙つき。
しかし、「つや姫」と違い山形県外での作付けがほとんどないために知名度が低く、その影響で比較的安価で取引されることが多いようです。
特徴として冷めても味が落ちにくいことから、おにぎりやお弁当用としても非常に重宝されていて、弁当業者や飲食店、コンビニの業務用のお米としての需要も非常に高いそうです。
ちなみに、セブンイレブンのおにぎりの多くは、山形県産の「はえぬき」が使われているそう。
「つや姫」ってこんな米
1998年山形県で食味日本一を目指して山形県立農業試験場庄内支場(現・山形県農業総合研究センター水田農業試験場)で、開発が始まった「つや姫」。
2010年のデビュー以来7年連続で食味ランキングで特Aを獲得するなど、山形県のブランド米としての地位を確立しています。
名前に「つや」という字が使われているように、ご飯のツヤがとても良く、贈り物やプレゼントとしても人気の品種です。
山形県内の有名旅館の多くが食事につや姫を使用していて、お土産売り場でもよく見かけます。
「はえぬき」と「つや姫」の違いとは?
まずは炊く前のお米の粒や色などを見比べてみました。
大きさ太さ長さなどは、ほぼ同じと言って良いと思います。
色は気持ちつや姫の方が白いと感じましたが、違いはほぼないと言っていいと思います。
どちらも粒の大きさや色なども揃っており、お米としてとても綺麗です。
前回の「どまんなか」と「ひとめぼれ」の食べ比べの時は、粘りや甘味、食感など特徴が一緒のものを食べ比べましたが、
今回は甘味以外の特徴が違う品種のようなので、食べた時に違いがハッキリ出るのではないかと、ちょっとワクワクします。
パンフレットによると、「はえぬき」のおすすめ料理はハンバーグ。「つや姫」のおすすめ料理は和食全般とのこと。
なので、サッパリした物からこってりした物まで味の幅を広げておかずを用意し、食べ比べることにしました。
今回食べ比べで用意したのは以下の5品です
・しそ昆布
・生卵
・手羽と大根のスープ煮
・鮭の塩焼き
・ハンバーグ
◆いざ、お米の食べ比べ
まずは炊き上がりをそのまま食べてみます。
今回も公平を期すために、土鍋を二つ用意して両方同時に炊き上げました。
食べる前に炊き上がったご飯をお茶碗によそって、見た目の比較。
写真では少し分かりづらいのですが、「はえぬき」に比べて「つや姫」の方が、やや白く艶があるように感じました。
どちらも粒立ちも香りもしっかりしていて、とても美味しそうです。
まずはそのまま一口
「はえぬき」の方は、粘りはそこまで強くなく非常に食べやすいです。そしてお米の旨味がとても強く、そのまま食べてもかなり美味い。
感覚的には、粘りや旨味、食べたときのほぐれ具合など、非常にバランスの良いお米だと感じました。
「つや姫」の方は、はえぬきと比べてモチモチとしていて粘りを感じます。
噛むと甘みを強く感じるのに意外と後味はサッパリしていて、粘りの強いお米にありがちな食べ疲れはあまりしないのではないかと予想。
「はえぬき」と比べると、お米としての主張が強く感じられます。
◆しそ昆布で食べ比べ
食べ比べをする時は味や脂の薄いものからが鉄則です。
ということでまずは、おにぎりや食卓のあと一品として定番のしそ昆布から。
はえぬき:ご飯と昆布を口に運ぶと、程よく口の中で混ざり、みずみずしさを感じます。しその風味も邪魔しません。
つや姫:もちっとした食感が強く、あっさりしたしそ昆布でも食べごたえがあります。これはおにぎりとかにも良いんじゃないかと感じました。
◆手羽と大根のスープ煮で食べ比べ
はえぬき:ご飯との相性が最高。汁が絡む系の料理は間違いなく合う。
つや姫:スープの塩味が引き金となり、ご飯の甘さを強く感じた。
同じおかずでも、お米でこんなに感じ方が変わるのかと感心。
◆鮭の塩焼きで食べ比べ
はえぬき:鮭の塩気や脂との相性が非常に良くとてもバランスが良い。
おにぎりに向くような気がする。
つや姫:やはり素材の塩気で米の甘さを強く感じる。食べ応えがとてもある。
粘りが強いのでおにぎりにするのであれば 、固くならないように柔らかく握る必要があると感じました。
◆卵かけご飯で食べ比べ
はえぬき:口の中でのほどけ具合が良くサラサラと食べられる。
ご飯の粒感も卵の甘さもしっかりと感じることができた。
粒立ちがしっかりしていて粘りもそこまで強くないので、これは間違いなくお茶漬けや雑炊にも向いているハズ。
つや姫: 意外なことに、お米のもちもち感や甘みが強く卵に勝ってしまった。
逆に言うとご飯食べた感が強い。
ただこれは食感の問題もあったと思うので、炊き方(柔らかさ)によっては、評価が変わるかもしれない。
◆ハンバーグで食べ比べ
はえぬき: ハンバーグの肉の旨さを強く感じる。おかずの邪魔を全くしない。パクパクご飯がすすむ。
つや姫:お肉の食感と米のもちもち食感が合わさり、食べ応え抜群でガツンとくる感じ。食べごたえ重視の人には良いが、あっさり系が好きな人は食べ疲れする可能性があるように感じました。
◆冷めたご飯(塩むすび)で食べ比べ
お弁当やおにぎりなどで使うことも想定し、塩むすびを作り冷めた状態で食べ比べをしました。
はえぬき:粘りがそこまで強くないので、口の中で適度にほどけます。
梅干しや鮭などシンプルな具でも、ツナマヨのような味の濃い具でもどちらも合いそうです。
ただ粘りが強くないので、結露などの水分が入ると一気に水っぽくなり味が落ちる印象。
お弁当などにする場合は、粗熱を取ってから蓋を閉めるなどの工夫が必要かもしれません。
つや姫:お米自体の甘みが強いので、塩気で一層旨味と甘みを強く感じました。
お米自体のパワーが強いので、おにぎりにする場合はシンプルな具がいいと思います。
また冷めると粘り気をより強く感じました。
やはりおにぎりにする場合は柔らかく握るなど、ちょっとした工夫をすると美味さが大きく変わると感じました。
◆食べ比べてみてのまとめ
茶碗によそった見た目はほぼ変わらないのに、食べ比べるとここまで明確に違いが出るのかと、今回も感動しました。
簡潔にまとめると、「はえぬき」の強みはバランスの良さだと感じました。
おかずの邪魔をしないけど、お米としての物足りなさも感じない。まさに万能型の引き立て上手。
おかずの味を引き立ててくれるので、おかずを色々楽しみたい人にぴったりのお米だと思います。
多くの飲食店や弁当屋さんなどプロが「はえぬき」を選ぶ理由が良く分かりました。
そして「つや姫」の強みは、甘みの強さやもっちり食感の食べごたえがあるところ。
アッサリしつつ塩気があるようなおかずとの相性はバッチリです。
「焼き魚・ご飯・味噌汁」のようなシンプルな食卓でも、しっかり満足感を得られる良いお米だと思います。
まさにご飯を楽しみたい、ご飯をお腹いっぱい食べたいという人には最高のお米でしょう。
◆お米の食べ比べは楽しい
今回も前回と同様に、食べ比べはちょっとしたイベントとして夫婦で楽しめました。
面白いなと思ったのが、お米やおかずとの相性の評価は夫婦で共通していても、どちらが好きか?という好みの部分では個人差が出たことです。
ガッツリが好き、サッパリが好き、体調の良し悪しなど、その人が潜在的にご飯に求めているものが反映されたのではないかと思いました。
そして食卓を囲み食事に集中しながら共通の話題で盛り上がる、とても良い団らんとなりました。
例えば、家族の好みはどんなタイプなのか、そしてどんな価値観なのか、そんなことも食べ比べを通じて見えてくるかもしれませんね。
お子さんがいる家庭なら、食べ比べは盛り上がること間違いなしですし、食育としてもオススメです。
◆最後に
今回食べ比べをした「はえぬき」も「つや姫」も、どちらもとても美味しいお米でした。
特に「つや姫」は山形のブランド米として色んな場所で売られていますし、山形に旅行に行くと多くの宿で「つや姫」が出てきます。
そして今回食べ比べた「つや姫」は、山形の旅館で食べた「つや姫」とは少し違ったように感じました。
やはり品種は同じでも生産者や管理方法によってだいぶ味が違うのではないかと思いました。
なので 「同じ品種で産地や生産者さん違いの食べ比べ」 もきっと面白いんじゃないかと思います。
とにかくどちらも良いお米でした
さすが生産地まで足を運び、生産者さんの人柄まで見てお米を選んでいる尾形さんのチョイスは素晴らしいと、再確認しました。
今回も美味しいお米と良い時間をありがとうございます。ご馳走様でした。