米の漢字の由来と語源

「米」という漢字の語源と由来

 

突然ですが、「米」の漢字の由来ってご存知ですか?

「米」の漢字の由来として、最も有名なのが、お米が実り収穫するまでに八十八回の手間をかけるから、「八 十 八」という漢字を分解してくっつけて「米」という漢字ができた…というものです。

 

でも、実は「米」という漢字の由来には他にも色んな説があって、個人的には別の説の方が正しいのではないかな?と、思ったりもしています。

 

この記事では、「米」という漢字の由来にスポットを当てながら、「米」という漢字の成り立ちや、「こめ」の語源についてもお伝えしていきます。

 

これを読めば、意外な発見があって、もっとお米のことが身近になってくるかもしれません^^

 

●漢字の由来や成り立ちとは?

漢字の成り立ち
出典: 家庭学習レシピ

漢字の由来・成り立ちというのはいくつかパターンがあるのですが、今から3千年以上前の古代中国がルーツです。

 

ものの形から生まれた文字、ものの形を象(かたど)って作られた漢字が最初です。例えば、「山」は山が並んでいる様子が変化して、「山」という漢字になりました。

 

⇒参考:『漢字の成り立ち【象形・指事・会意・形声】まとめ

 

●お米になる前の”稲”の漢字の由来

 

稲の漢字の由来は?
稲の漢字の由来は?

お米は稲からできますよね。

そして稲を表すのが「禾」(のぎ)という漢字でした。稲の穂先が垂れ下がっている姿が漢字の由来と言われています。

禾(のぎ)へんには、稲のほかにも、種・穂・秋・穫、など稲作に関係する漢字がありますし、和という漢字は皆でお米を作っている風景が見えてきそうです。

 

●「米(こめ)」という言葉の語源は?

 

「こめ」という言葉の語源には、2つのルーツがあると言われています。

 

1.「こめる」

 

以前の記事「なぜお祓いのときに、お米をお供えするのか」にも書きましたように、お米は神話の時代から日本人にとって非常に大切な穀物でした。今も様々な儀式や祭礼にお米が登場します。

お米には、神様から贈られたものであるとか、ご先祖様が守ってくれたものという思いが込められているもの…と捉えてきたのです。

また、籾殻に白米が籠められている状態を表しています。

 

2.「小さな実」

 

穀物の小さい粒を「小実(こみ)」「小目(こめ)」と言っていて、ここから転じて「こめ」と言われるようになったという説もあります。

アジアでも似たような言葉の意味として使われていて、ベトナム語で「コム」と言うと、日本で言う「ごはん」と同じ意味なんだそうです。

稲のルーツが東南アジアにありますので、この言葉の近さも偶然ではないかもしれないですよね。

ちなみにお米の粒のことを、昔、日本では「よね」と言っていました。山形県には米沢市(よねざわし)がありますが、米沢の地名の由来は、米(よね)がたくさん成る沢=米沢という説があるそうです。

●「米」の漢字の由来・3説

稲穂を横に置いた姿から、米という字ができた説
稲穂を横に置いた姿から、米という字ができた説

1.「稲穂」を表す象形文字説

もともとは一本の横棒に上下に3本ずつ、計6本の縦線が付いている姿で表していました。これは横向きになった稲穂を表現していたといわれています。

 

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――――   → 米
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今から1,200年ほど前、奈良時代では稲も「米」と表していました。

そこから植物の「稲」と食べ物の「米」が分けられるようになったのは、鎌倉時代から室町時代だと言われています。

 

2.米粒が飛び散った形説

「十」という漢字に、米粒が四方へ飛び散った姿を表したというものです。
これは農林水産省の解説にあった、面白い説です。

⇒参考:農林水産省ページ「米という字の由来(ゆらい)をおしえてください。

 

3.「米」づくりの八十八の手順説

そして、最もよく聞かれるのが冒頭にもお話した、お米の苗を育て、田植えを行い、稲穂が実って収穫するまでに八十八回の手間をかけるから、「米」という文字を「八十八」と分解して見る…というものです。

昭和30年代から稲作の機械化が進んだことで、昔と今では昔と今では農作業の手順も変わってきましたが、それでも3月の種もみ準備から、9~10月の稲刈りと乾燥まで数多くの作業があるのは変わりありません。

農林水産省のこどもの食育に関するページを見てみると、図や写真もあって面白いですよ^^

⇒農林水産省ページ「子どもの食育

「くらべてみよう!昔と今のコメ作り」

 

●由来を調べると面白い、米へんの漢字たち

どれも米へんの漢字ですが、これらの漢字の読み方や由来をご存じですか?

 

「米 + 花 =糀(こうじ)」

米+花=糀(こうじ)
米+花=糀(こうじ)

お米が発酵するときにこうじ菌が繁殖し、その姿がまるで花が咲いたように見えることから、こうじは「米+花=糀」と表わされるようになりました。ちなみに同じ読み方の「麹(こうじ)」の場合はお米ではなく、麦や大豆を発酵するときに使うことが多いです。

「米 + 康 =糠(ぬか)」

米 + 康 =糠(ぬか)
ぬかは乾煎りすると、日持ちします

右側「康」の字は穀物の硬い殻を表しています。

そして、玄米を白米に精米した時に、お米の表面の硬い玄米層を削った際に出る粉末が「ぬか」です。

余談ですが、精米したての「ぬか」は「生ぬか」と言い、そのまま食べることができます。

元が玄米層なので栄養が豊富で、粉末になっているため吸収もしやすく、こだわっている生産者さんのお米を精米した際に出るぬかは、まるで、きな粉のような甘さがあります。

実店舗のお客様には、精米したての生ぬかを試食してもらうこともあるのですが、皆さん「甘い!」ってビックリされます。

「米 + 刃 =籾(もみ)」

米+刃=籾
米+刃=籾

籾(もみ)は、一言で言えば、稲の果実です。

秋の田んぼで稲穂に実っている、あの一粒一粒が籾ですね。

籾の漢字の由来は、「刃のような硬い殻を被っている米」という所から来ているそうです。言われてみれば、籾の見た目は刀に似てるかもしれません^^

ちなみに、籾殻には玄米を外部環境から保護する役割があるため、新米を収穫してから冬の間は、籾のままで保存している生産者さんもいます。(当店とお付き合いのある農家さんでは、小国町の石垣さんと、南陽市の島崎さんが籾保存をされています)

そして、春になったら籾摺りをするのですが、外部環境から守られているために玄米の鮮度が良く、籾摺りしたてのお米は、新米のような瑞々しさが保たれていると言われています。

また、翌年に苗を育てるときの種(種籾)も、この籾の状態で保管しています。

普段何気なく見ている漢字ですが、ちょっと由来を気にするだけで、色々なお米との関連性が見えてきて面白いですね。

●まとめ 尾形米穀店が考える「米」の漢字の由来

尾形米穀店では、「米」という漢字の成り立ちは、稲穂を表す象形文字が最も自然ではないかと考えます。

 

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――――   → 米
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なぜなら、もともと日本にお米が伝わったのが縄文時代の終りで、遺跡から種もみの化石が見つかっているのですね。そして邪馬台国の時代には全国で米が主食として作られ、同時期に漢字が入ってきました。既にこの頃から「米」という食べ物があり、「米」を表す漢字があった…と考える方が自然です。

飛躍的に生産量が伸びてきたのが鎌倉~室町時代と言われていますが、その時代でもまだ育苗という概念はなく、田んぼに種籾を直播きして栽培していました。良い苗ができるかは、運次第です^^;

今の米作り工程の基礎が出来上がったのは、戦国の世が終わり、農民の身分が固まって、安定して稲を栽培できるようになった江戸時代と言われています。

お米をより多く収穫できるような手順や方法が研究されて、1697年には「農業全書」という日本最古の農書と言われる名著も出版され、農業技術が飛躍的に進化していったようです。

その技術が全国の農村に広まり、稲の栽培方法が確立されていった中で、「米=八十八の工程説」が生まれたのではないかと考えています。


ということで、今日はお米の漢字の由来について書いてみました。

元々、歴史が好きなので、お米を通じて歴史を見るのはとても面白かったです^^江戸時代以降の栽培技術の進歩を、もっともっと調べてみたくなりました(笑)

また機会があれば、そんな記事も書いてみたいと思います^^

 

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